SiO2

書評(感想文),勉強したこと,作ったもの,分解したもの,など.いろいろoutputするところ.

Don't Believe Everything You Think(2006)

ISBN:9784903690681

落ちてきた飛行機部品に当たって死ぬ確率とサメに食い殺される確率はどちらが高いか?

確率的には前者の方が30倍起きやすい.なのにサメを選ぶ人が実際多いのはニュースで良く取り上げるし,木曜洋画劇場でサメ映画をたくさん放映するから.
サメに食われるとはどういうことか?サメのいる海へ行って,落っこちて,サメにねらわれて,溺れる前に襲われて….各事象の前提,おのおのが起きる確率は?と考えていくとかなり難易度が高い.

客観的と思って判断材料にしている物事は客観的ではないことが多い. それは人間というフィルタを通すため.人間は生きやすくするために色々と手を抜いている.簡略化のヒューリスティクス

  • 事例証拠を重視しがち.他方で過去の統計を軽視しがち.ニセ科学はこの傾向が強く質が悪い証拠しかない.大体は反証不可能.
  • 未来予測をしたがるあまり,単なる偶然に意味を見いだす.占い(フォアラー効果)や週間天気予報(2日より先は有意でない).
  • 追認されたいがために,自説を裏付けることばかり覚えているし,賛同する言葉を選んで聞く.
  • たやすく記憶を改ざんする.後知恵バイアスも強力に思考を制限する.
  • 与えられた初期条件に左右される.アンカリング/調整ヒューリスティクス
  • 想像しやすいことしか想像しない.利用可能性ヒューリスティクス
  • 集団思考.元々似た考えの人とつるむ傾向があるため,正のフィードバックがかかり時に暴走する.ムラ社会や宗教.

などなど,やりたい放題やっている.統計を身につけているはずの理系ですら,論理で戦うはずの法曹ですらやらかす.このような性向はあらがいがたいものである.逆にプレゼンや詐欺のテクニックとして利用されていたり.

このような副作用があるとはいえ,簡略化,同調的な思考形態,原因を探る傾向は生きるための戦略であって欠くことはできないほどの効用もある(全部を疑っていたら生きていけない).ならばせめて自覚的でいよう,そうすることで幾ばくかの理性を取り戻せる,と言うのが本書の趣旨.

自分は人間なんていうのは元来当てにならんもんだ,と思っている.

と言う事は少なからずバイアスがかかっている.だからこの本を買ったのかもしれない.さらには自分の意見と親和的なことだけ記載しているかもしれない. 懐疑主義の立場をとるなら買って読んでみるのがよい(ステマ).ただ本書も一次ソースではないから,どこまで遡るかは簡略化戦略と相談したうえで自覚的に決めて欲しい.