SiO2

書評(感想文),勉強したこと,作ったもの,分解したもの,など.いろいろoutputするところ.

仏教・神道・儒教集中講座

ISBN:9784198925680
※真剣に信仰を持つ方を茶化す気はありません.そしてかなり端折ってます.

オルガンティノ神父「キリスト教絶対日本で流行る.信者ジワジワきてるから」 日本の神様「仏教もそうだったけどどっか魔改造されるから.ムリムリ~」 芥川,神神の微笑 より

なぜこの本を買ったのか思い出せないが,合わせて他の儒教の本も購入履歴にあるので儒教について知りたかったんでしょう.

日本は神道がベース,その上で仏教と儒教を変容した形で受け入れたのです,と言う内容.砕けた感じの文体なのでさらりと読める.カレーの本家インドにはないビーフカレーが広まったという例えで変容させるということをイメージさせている.

自分は宗教知識が皆無なので色々と面白かった.何となく日本人は神道なんだろうと思っていたが,2種類あるとか知らなかった.国家神道と言うものがあるのも初めて知った.

本当はタイトル通り仏教,神道儒教の順に書かれているけど,神道から書く.

  • 神道:和をもって尊しとなす.

"本来の"神道は「自然のまま」とよしとする.穢れを嫌い,言霊の概念をもつ.穢れは祓い祀ってきれいにするという発想なので,排斥はしないのが他宗教との違い.外来のものは合うようにして取り込んでしまう.
言霊として,言ったことが本当になると思っているので口数を減らす.あえて発言しない.名前を隠して他人からの言霊攻撃を予防する.紫式部などはPNだけどそういった理由から.「部長」と役職で読んでみるのもそう.
国家神道は別物で,欧米列強に対抗するためにキリスト教のような一神教概念を導入したもの.神は天皇とした.

  • 仏教:生きるのがつらい.

→死んでも輪廻転生で永遠に生きるのでやっぱつらい→まじ無理だから無常を悟り輪廻から出るね(このへんまで元々の仏教)→往生して浄土へ行く道もあるよ(大乗仏教)→阿弥陀如来をイメージ(=念仏)したら浄土行ける(浄土教)→イメージ不要,ナムアミダブツ何回か唱えればいいよ(浄土宗,法然)→唱えるのは阿弥陀様のはからいだからあんま考えるのは失礼だよ(親鸞)→往生ガチャはSSR確定してるから1回でいいよ(一遍)→(亜種乱立,武装勢力がでてくる)→僧兵やめろ政教分離するぞ(信長)→檀家制度作るから企業努力しないでいいよ(家康)→仏教堕落,自由にやっていいよって言われても何したら…(明治以降)

結果,今のなんとなく葬式のときくらいしか意識しない風潮が完成した.

  • 儒教:徳があればなんでもできる.

先祖崇拝と天人相関説(為政者が悪いと悪い世になる)を学問のように体系化したもの.形式主義であり超保守的.徳には順序があって孝(親子)が第一.義(日本で言う忠)とか悌(きょうだい)とかはそれより優先度が低い.従って戦争中に親がなくなった場合は職場放棄をするのが本当である.親のためなら子を害することが本当である.儒教(儒学)は日本にもツールとして輸入されたが,少し変えている.例えば職場放棄させないよう「忠孝一致」と言ってみたり,科挙っぽいものは取り入れたが試験としてではない,など.
もう一例,信>兵>食としており,食(=経済)は二の次になっている.

どうしても1000文字を余裕で超える.もうちょっとコンパクトにならんか….

Don't Believe Everything You Think(2006)

ISBN:9784903690681

落ちてきた飛行機部品に当たって死ぬ確率とサメに食い殺される確率はどちらが高いか?

確率的には前者の方が30倍起きやすい.なのにサメを選ぶ人が実際多いのはニュースで良く取り上げるし,木曜洋画劇場でサメ映画をたくさん放映するから.
サメに食われるとはどういうことか?サメのいる海へ行って,落っこちて,サメにねらわれて,溺れる前に襲われて….各事象の前提,おのおのが起きる確率は?と考えていくとかなり難易度が高い.

客観的と思って判断材料にしている物事は客観的ではないことが多い. それは人間というフィルタを通すため.人間は生きやすくするために色々と手を抜いている.簡略化のヒューリスティクス

  • 事例証拠を重視しがち.他方で過去の統計を軽視しがち.ニセ科学はこの傾向が強く質が悪い証拠しかない.大体は反証不可能.
  • 未来予測をしたがるあまり,単なる偶然に意味を見いだす.占い(フォアラー効果)や週間天気予報(2日より先は有意でない).
  • 追認されたいがために,自説を裏付けることばかり覚えているし,賛同する言葉を選んで聞く.
  • たやすく記憶を改ざんする.後知恵バイアスも強力に思考を制限する.
  • 与えられた初期条件に左右される.アンカリング/調整ヒューリスティクス
  • 想像しやすいことしか想像しない.利用可能性ヒューリスティクス
  • 集団思考.元々似た考えの人とつるむ傾向があるため,正のフィードバックがかかり時に暴走する.ムラ社会や宗教.

などなど,やりたい放題やっている.統計を身につけているはずの理系ですら,論理で戦うはずの法曹ですらやらかす.このような性向はあらがいがたいものである.逆にプレゼンや詐欺のテクニックとして利用されていたり.

このような副作用があるとはいえ,簡略化,同調的な思考形態,原因を探る傾向は生きるための戦略であって欠くことはできないほどの効用もある(全部を疑っていたら生きていけない).ならばせめて自覚的でいよう,そうすることで幾ばくかの理性を取り戻せる,と言うのが本書の趣旨.

自分は人間なんていうのは元来当てにならんもんだ,と思っている.

と言う事は少なからずバイアスがかかっている.だからこの本を買ったのかもしれない.さらには自分の意見と親和的なことだけ記載しているかもしれない. 懐疑主義の立場をとるなら買って読んでみるのがよい(ステマ).ただ本書も一次ソースではないから,どこまで遡るかは簡略化戦略と相談したうえで自覚的に決めて欲しい.

マーケット感覚を身につけよう(2015)

ISBN:9784478064788 日本人に欠けているのはマーケット(市場)感覚である.そのために折角のチャンスをフイにしている.単なるスキルなので,意識して身につけるようにしよう.

  • 世の中はどんどん市場化が進んでいる.この趨勢からは逃れられないから観念しよう.相対価値がどんどん市場価値へ置き換わっている.
  • 「よいものを作れば売れる」というのは時代遅れのセンスというよりもはや歴史上の出来事.まずどの程度で売るのか,売れるのか?から始める.原価積み上げで価格を決めるのではなくて物事の価値を自分で判断したうえでターゲットに向けた価格設定をすること.
  • ちょっとシフトした考えが大切.たとえば書店が提供するものが「単なる本」ならAmazonとかに勝てない.「他でもない自分が選んだ本」と考えると広がりが出る.
  • スキルと言ったが,5個くらいトレーニング方法がある:
    <プライシング能力を磨く>
    常日頃から「自分がこのくらいが妥当だと思う値段」を考える.相場とかは他人の価値基準なので当てにしない.これができないと自分自身のプライシングすら他人任せになる.
    <インセンティブの理解>
    他人がどのように考えて行動したか分析する.「みなお金のために行動している」と考えるのはあまりに単純に過ぎる.本当に金銭第一であれば飲みになど行かないし外食もしないはず.
    物欲センサーを最大感度にする.欲望は人に話すようにする.さび付かせていてはだめ.
    <市場評価を重んじる>
    井の中の相対評価に一喜一憂することはムダ.「決めてからやる」のではなく「やってみて決める」.判断は市場により行われるため.
    <失敗と成功の理解>
    シリコンバレーは「失敗に寛容」ではなく「失敗経験がない人は評価しない」. 2回3回失敗して成功するのが健全というもの.学校にて知識を学ぶのは散々やっているので,市場で失敗から経験を学ぶことにリソースを振り向けるべき.
    <市場性の高い場所を求める>
    アメリカのビジネススクールや飲食店など.都会も概して市場性が高い.逆に地方都市,役所,国立大などは低い.都会で市場感覚を鍛えて地方へ戻り,市場性を持ち込んで価値を見いだすのは一つの戦略. (葉っぱビジネスの「いろどり」)
  • 専門性は次々乗り換えるのがよい.一本槍で望むのは,RPGでいえば炎魔法縛りでクリアを目指すようなもん.

最後のほうの未来の話は"The shift"と同じような話になっている.市場を中心において考えると,およそ未来予測も似通ってくる.市場原理が導入されると競争が激化するので,生き残るための知恵が求められる.自分がどうなるべきなのか,どこならば勝てそうなのか,見極めることが肝要.

とりあえずはプライシングの訓練からやってみることにする.

そんじゃーね!

The shift(2011)

ISBN:9784833420167 社外の集まりで友達が読んでいたので買ったけど3年間寝かしていた本.

ウィリアム・ギブスン「未来はすでに訪れている.ただしあらゆる場に等しく訪れているわけではない」

産業革命の時のように世の中が変わっている.能動的にアクションしていかないとその他大勢に埋没して没個性化したり,孤独になったり,充足を得られなくなったりする.そうなりたくない場合は「3つのシフト」を意識して未来に対してガシガシ働きかけて いくべき.
前半で,過去から未来にわたる働き方のシミュレーションを通じて変化を浮かび上がらせる.未来は2025年を想定.具体的な影響をエピソードで示す.たとえばネットの進化やロボットの台頭で,人間の仕事が減るとか80歳とかでも働く人が増えるなど.
後半で,3つのシフトに対する詳細な説明を示している:

<"高度な"知的資本>

「連続スペシャリスト」になってマネされない専門技術を持ってセルフブランディングを行うこと.ゼネラリストは死ぬ.自分の武器を認識し,時代遅れになる予兆があれば次への準備を怠らない.他の分野に軸足を移して「連続的に」専門分野を広げていく必要がある.

<人間関係資本>

ネットや遠隔ロボットの普及で空間的制約がほぼなくなるから,コラボがもはや必須になる.3種類のグループを構築すること:

  • ポッセ
    ギルドメンバー.いざというときに頼りになる,能力のある人たち.
  • ビッグアイデアクラウド
    イデアの源泉になりうる群衆.早い話twitterのフォロワーみたいな人たち.
  • 自己再生のコミュニティ
    リアルに会える友達.リフレッシュして精神を健全に保つ.
<情緒的資本>

自分が本当に得たいものを見極め,得るためのアクションとそのために犠牲にするものを明確に意識すること.人の価値基準は多様化しており,金銭による評価に価値を見いださない人が増えている.自分はどうか?内省した上で金銭ならばよし,違っていれば(経験など)それを手にするための行動を起こす.意図を持って選択し,選択に伴い失うものを受け入れる.
内省を深めて,手に入れたいものを突き止めておくことが資本になる.

自分の場合,特に人間関係資本の構築に先んじて取り組もうと思っている.おそらく時間がかかるため.総じて感じたメッセージは,主体的に生きた方が人生楽しいよねー,ということ.

フィードバック入門(2017)

ISBN:9784569832906
東大中原研のblogは結構前から(7年くらい?)見ていて興味があり読んでみた.「ヤフーの1on1」でも対談してたし.

  • いまの中間管理職は大変だ.これは構造的なものだから仕方がない.自分を責め ないで!
  • 一時ティーチングが全否定されコーチングが持て囃された.これはマーケティングにすぎないから従う必要はない.ティーチしてない=持ってないものはコーチして出てくるわけがない.
  • フィードバックはティーチングとコーチングを内包している.※以降FBと省略する
  • 客観情報収集(SBI:Situation(状況),Behavior(振る舞い),Impact(影響))を事前にやること.職場回遊や1on1が効果的.
  • こんな感じで進める:
    情報収集(FB前にやる)

    信頼感確保→事実通知→問題行動(gap)の腹落とし→振り返り支援→期待通知

    フォローアップ(FB後にやる)
  • チェック方法:
    相手と向き合っているか?シリアスモードを崩していないか?
    SBI情報を淡々と述べているか?
    反応を見ているか?
    立て直しのサポートはできているか?
    再発防止のため,再発パターンを予測しているか?
  • コツというか心構え:
    予行演習,内容記録,無駄にほめない,「即時,移行期」にやる,沈黙を恐れない,ストレスと向き合う,嫌われても気にしない,どうしてもダメなら「人事施策」
  • 自己FBを求めて外へ出よう

FB相手のタイプ別Q&Aが面白くて実践的.(逆切れ,ダンマリ,逆FB,いいわけ,…)

そして人生は続く.

Only the paranoid survive(1996)

ISBN:9784822255343
旧題:インテル戦略転換

「10Xの力」が現れるタイミングに「戦略転換点」あり.
インテルがメモリからマイクロプロセッサの会社に「戦略転換」した時を例にしていまが「10X」の時かどうかをどのように見抜くのか,どのような行動をとるのかを説く.

たとえば…

  • どのように予兆を判断するのか?気になったものはシグナルなのかノイズなのか?荒削りゆえ「10X」ではないように見える「初期バージョンの罠」なのか?判断するために社内の「カサンドラ」に意見を求めることもできる.経験からの「銀の弾丸」も利用できる.

  • 行動に移す際,「戦略転換」は迷いなく明確にわかりやすくすべきで,あれこれリスクヘッジをしていては組織の行動が完遂できない.(マーク・トゥエイン「卵は一つのカゴに盛り、そのカゴをよくよく見守れ」)なぜなら戦略転換するまでに,社員は疲れ果てていて活気も士気も低下しているから.方向が間違っていたら死ぬけど,何もしなかったら確実に死ぬので行動する以外選択の余地はない.ただ,「試行」をしてみることは全然ありだし大切なこと.

要はparanoid(超心配性)になって変化をいち早く検出し,対策をとることが大事で,そうしないと法人も個人も生き残れないぜ!という話.初版上梓が20年前なのだけど,今でも十分通用する.

そしていま,自社は「戦略転換点」の近傍にいると思う.